「カワイイ」が世界を動かし始めた

近年、日本のポップカルチャーをテーマとした博覧会が世界中で開催されています。

フランス、タイ、アメリカでは毎年のように開催されており、二〇一六年十月には第二のドバイと呼ばれる中東・アゼルバイジャンでもジャパンエキスポが開かれ、これまで日本に馴染みのなかった地域でも、日本の魅力が徐々に浸透しつつあります。そのなかで特に私が注目しているのはフランスで開かれている「ジャパンエキスポ」です。パリのジャパンエキスポは盛大かつ歴史もあり、昨年(二〇一七年)で十八回目の開催となりました。欧州最大の日本の祭典として、いまでは二十三万人もの日本愛好家らが足を運ぶモンスターイベントです。

ちなみに二〇一二年のジャパンエキスポでは、きゃりーぱみゅぱみゅさんがフランスで初めてのライブを行い、二日間で約一万三千人という「ジャパンエキスポ」内で最大の動員数を記録したという報道がありました。

ライブ会場では、彼女と同じような奇抜な原宿ストリートファッションをまねたファンたちの熱狂ぶりがニュースとなりました。こうしたファンの姿をみて、「おたく」が単なる個性的な遊びではなくなり、「流行」を軽く飛び越えて「おたく文化」として世界を牽引しているという現実を目の当たりにしたのです。

彼女はその後もクールジャパンを象徴する存在となり、「カワイイ」という日本語とともに海外のファンを引き付けていきます。日本国内でもその存在感、注目度は増し、二〇一四年には、経済誌の「日経ビジネス」七月十四日号の表紙を飾ることとなります。

彼女の表紙号は「コンテンツ強国へ この〝熱狂〟を売れ!」をテーマに、世界へ打って出る日本のコンテンツ産業を特集したもので、サンフランシスコのライブのワンショットで表紙を飾った、きゃりーさんの人差し指でゆび指す姿は、日本が目指す先をイメージさせていてとても印象的でした。

きゃりーさんは、強烈で個性豊かなイメージガールとなって「クールジャパン」を加速させる役割を果たしたのです。その後の原宿ファッションの注目ぶりは言うまでもありません。

そして、スシ、キティちゃん、けん玉から折り紙……。

日本のことならなんでもOK、日本大好き!

こんな状態が長らく続いていて、世界の日本びいきはとどまることを知りません。

芸術の国フランスを魅了する日本ちなみにフランスの日本びいきはいまに始まったことではありません。一八七八年、パリ万国博覧会が開催されました。この時、空前の日本ブームが起きたのです。これ が「ジャポニズム」と呼ばれる絵画・芸術など、ありとあらゆる分野で起こった〝日 本趣味〟の始まりです。

このパリ万博で公開された浮世絵の空間表現や鮮やかな色使いが、ヨーロッパの画

家たちに強烈な印象と新たな発想をもたらしました。マネ、モネ、ドガ、ゴッホなどの画家たちが、浮世絵を収集し模写することで、新たな作風を生み出していったことは有名です。

芸術の国フランスの人たちを魅了した「日本の美」は、その後も「日本はすばらし

い!」というイメージをフランス人の心の中に溶け込ませていきます。

英BBCが二〇一七年九月に発表した、「世界に良い影響を与えている国(世界世 論調査 二〇一七)」で、日本が「良い影響を与えている」とした回答が多かったのは、オーストラリア(七八%)、カナダ(七七%)、フランス(七四%)、ブラジル(七〇

%)、アメリカとイギリス(六五%)の順でした。フランスの日本に対する好感度は世界で三番目に高く、とても良い状態であることがわかります。ジャパンエキスポが盛況であるのもうなずけます。

最近の日本ブームは、ネオ・ジャポニズムとも言われていて、かつて浮世絵がヨーロッパ中を驚かせたように、日本のアニメやファッションが再び彼らの心をワクワクさせているのです。

KIMONOYA EIZI

「一流の人はなぜ着物を着こなすのか」を現代書林社より出版した著者のブログ

0コメント

  • 1000 / 1000