一流の人は 着物の基本を知っている
地酒などで一般的に話題となる産地。
実は着物にも、伝統を継承し今もそれが土地土地に息づく産地があります。そしてその産地にも特性があります。知識として産地がわかっていると、身に着つける方の気持ちも違ってきます。手間ひまをかけた良質なものを着ているという意識とともに、着物と帯が合わさって地域の文化を身にまとっているという高揚感――これは着ている人にしかわからない気持ちかもしれませんね。
たとえば、加賀友禅は自然をテーマにその面持ちを表現することに長けています。
金糸銀糸を使わず、「加賀五彩」 藍、臙脂、草、黄土、古代紫)という自然色の五色を使って表現するのです。しかも写実的デザインで、虫に食われた木の葉もそのまま表現されています。
加賀の地には九谷焼という焼き物がありますが、そこでも「九谷五彩」という「加賀五彩」とほぼ同じ色彩があります。
自然の色の五彩には、陰陽五行でいう「木・火・土・金・水」にも似た不思議さがあり、昔の人は、自然の恩恵を受けた美に対する意識を持っていたのではないか、そ
してその「念い」が今日まで伝わっていることの不思議と感動。着物が持っている時間軸は、途方もなく長いのです。
伝統という名のもとに見知らぬ人々が重ねてきた〝時間〟、それに感動と喜びを感じながら着物を楽しむのも、日本人ならではの楽しみ方なのかもしれません。
何百年も前から受け継がれ、ここから何百年何千年と受け継いでいく伝統のほんの一コマを愛でることで、引き継いでくださった方へ感謝と、私たち自身が日本の文化を引き継いでいく決心をしていくことになるのかもしれません。
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